Renkei日記 - 八十島法律事務所

2012-10-10 Wed

吉田一穂 「稗子傅」(ボン書店) 昭和11年12月31日刊


 所持しているのは、風鐸舎が昭和51年10月20日に発行した限定復刻版で、限定500部の内の1冊です。オリジナルは150部しか出版されませんでした。
これは一穂の第三詩集で、38歳のときに刊行しています。一穂は、「わが生涯の内部形律<渦・動・暗・轉>のうちその三位を占めるもので、これは次著の鬼胎たるべき約をもって編まれた稿本である。」と書いていますが、どうも、自分の詩はまだまだであると言いたいのでしょうか。
       「業」から
 つねに現實と否定の、騒音に燬(やき)つく我が胸の飢渇!
 懀み難い、憤り、空を低めて自ら�辰箸覆構僂痢�祈り、
 求め、夢む身の惱める限り、生くべき一つの世界―
 我あり、新しき天に鼓動する一つの存在!

2012-10-10 Wed 19:00 | 古本

2012-10-05 Fri

加藤郁乎編 「吉田一穂詩集」 (岩波文庫) 2004年5月18日刊


詩人吉田一穂は、1898(明治31)年8月に、現在の北海道木古内町で生まれ古平町で少年時代を過ごしています。1973年1月に74歳で没しています。
 編者である加藤は、吉田のことを、感性とか抒情などに没することなく、思考本位の詩人、絶対詩の世界にいた人と評しています。また吉田の、「詩は三行でよい。天と地と人―生物、生命です。」、「詩作とは、一語一語躓くことだ。」といった発言を紹介しています。   なるほど、彼の詩は難解ですが、とても力強いのが特徴でしょうか。
         「咒」から
 霾(つちふる)る逆天の地 掌に占で見析くる地平線
 捜す薬草も無く 時劫の陥隙に石斧は埋もれてゆく
 棘々と星を結晶させる白林の梢で 月が虧(かけ)ていった・・・・・
 骨を焙て 雀の卵を温める 「鶴に孵(な)れ!」

2012-10-05 Fri 17:00 | 古本

2012-10-05 Fri

吉田一穂 「海の聖母」 (金星堂) 大正15年11月15日刊


 所持しているのは、渡辺書店が昭和48年10月15日に発行した複製版ですが、限定600部の内の1冊です。これが第1詩集で、吉田が21歳のときに出した作品集です。この素晴らしい装幀は亀山巌で、助纂(編集を手伝ったという意味でしょうか)は春山行夫とあります。
       「都市素描」から
  曙人の荒い呼吸に都市は炎上する
  あ々熱闇に立つ血の十字架
  世紀はまた新たな戦慄を堕胎しつ々
  有機解體の癈頽期へ分裂し下降してゆく

2012-10-05 Fri 17:00 | 古本

2012-08-31 Fri

坪内祐三編「禁酒宣言上林暁酒場小説集」(ちくま文庫)1999年9月22日刊


 これも上林フリークによるアンソロジーで、タイトルから分かるように、酒にまつわる作品から選んでいます。
 選者は、大学院を出た20代の終わりころ、小林信彦が、かつて筑摩書房の全集を読破したことがあると何かで書いていたのを読み、小林氏ほどの読書巧者が全集を読破してしまうとは、かなり面白いのに違いないと思い、チャレンジしてみてはまったと書いています。
 この本は、選者の解説とともに、日本文学者のスタンレー鈴木の評論が載っています。そこで彼は、「ジェイムズ・ジョイスが何百頁も費やして描こうとした神話なき現代の神話世界を、上林は、わずか数十頁で描き尽くしている。」と書いています。
 選者が書いているように、貧乏くさくても「ミニマルな世界こそが、日本人が、日本人に特有の、ある、深遠で永遠なるものに近づける道」なのかもしれません。

2012-08-31 Fri 18:29 | 古本

2012-08-27 Mon

武田泰淳 「目まいのする散歩」 (中公文庫) 昭和53年5月10日刊


 著者の生前最後の本です。奥さんである武田百合子氏の口述筆記により書かれたものです。印象深い記述をいくつか拾ってみます。
 「うすらバカ」、「うすらトンカチ」などという悪口は、悪口ではなくて、わけへだてなく、われわれ人類の上に与えられた神様の批評のように思われてくるのは、恍惚の人のよくない癖である。」
 三島さんの死は、ニヒリズムの結果ではなく、川端さんの死は、ニヒリズムの証明であったか、どうか。それをたしかめようとする気持ちは、私にはない。
 どこを散歩しても、どこのベンチに腰掛けても、病後の私は笑ったような、笑わないような顔つきをしている。女房は「笑ったような顔をしているけど、本当はそうじゃあなくて、ただ、そういう顔をしているのね。」と名言を吐いた。

2012-08-27 Mon 18:10 | 古本

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