Renkei日記 - 八十島法律事務所

2012-05-14 Mon

谷沢永一・向井敏 「縦横無尽」 (日本経済新聞社) 昭和55年4月22日刊


 向井が、「君が1冊の本の本質を一言で言い表そうと全力を傾ける、それに僕は聞きほれてしまってすぐに言葉を継いで行けず、打々発止という具合にいかなかったのが心残り」と言っているように、あの向井でさえ、聞き役にされています。例えば、向井が、安東次男の読みの深さについて触れたところ、「実は、釈迢空という人は、深読みじゃなしに、深思いをして作品を作る人だ。しかし、実際に釈迢空のどの短歌でも、迢空がそんなに思いを込めたほど、方法としての表現効果は出ていない、と言ってもいいのじゃないか。」とか、林達夫の「共産主義的人間」については、「この1冊はおそるべき書物で、二十世紀における革命とはどういう性格のものであるかということを的確に説き明かした、いわば革命総論であって、しかもそういう本として比類がない。」と谷沢は言います。こうした物言いは、谷沢の独擅場ですね。芸といってもいいと思います。

2012-05-14 Mon 19:18 | 古本

2012-05-01 Tue

平戸廉吉詩集(平戸廉吉詩集刊行會)  昭和6年12月12日発行


ダダイスト新吉の詩に「しんDA廉吉」という詩が収められています。彼は、窮乏と肺患とに苦闘した末、大正11年7月20日に29歳で亡くなっています。彼は、詩の手法に自覚的だったようで、
   333333333
      159603
   Vrrrrrrr++xx=x=0
というのもあるのですが、こんなのもあります。
 朝に生まれ夕べに死ぬる命  踊る踊るカメレオンが
 刻々に刻々に  大都會の  ショーウインドーに
 廢れた町の軒にも  時たまの外交に
 光る光る  星の雫が
 アルペンフローラの  黄金の刃物が
 心地よく感覺の中に  喰い込む喰い込む
 路上ですった燐の臭ひか アメリキャンシネスタイルの手から
 瞬間の狼煙火が  闇に 消える消える

2012-05-01 Tue 17:46 | 古本

2012-05-01 Tue

高橋新吉 「ダダイスト新吉の詩」 (中央美術社) 大正12年2月15日発行


 彼が世に出られたのは、2冊の詩集を携えて、突然辻潤の家を尋ねたからでした。当時彼は肉体労働のアルバイトをしながら生活していました。「深い藝術は上品な書齋や學校や、書物の智識から生まれては來ない」という考えから、辻は、新吉を佐藤春夫に紹介します。佐藤は、「辻からの紹介じぁいづれはこの見かけに相違はず相當のイカモノに相違ないと」考えたのですが、「ただ彼には見る人にだけ見える暗示がある」と思うのでした。
    「斷言はダダイスト」から
 DADAは一切を斷言し否定する
 無限とか無とか、それはタバコとかコシマキとか單語とかと同音に響く
 想像に湧く一切のものは實在するのである
 一切の過去は納豆の未來に包含されてゐる

2012-05-01 Tue 17:32 | 古本

2012-04-23 Mon

小野十三郎  「大海邊」  (弘文社)


 3冊の内の2冊目です。昭和25年10月10日に、弘文社から発行されています。装幀は、池田克己です。この詩集について小野は、
  「これらの作品は、いづれも8月15日といふあの運命的な日から見て前後あまり遠くない時間に於いて書かれた。思へば詩を書き始めてから今日に至るまで、不幸にも日本はいつもなんらかのかたちで『戦争』を中心にして動いてゐた。敢て云へば
これらの詩篇はみな私一個のために書かれた。」
と書いています。この詩集の「大海邊」から
        かへり見れば  さびしい風光ばかりだ
        私は夢に角枯れのある1本の松の大木が
        海べりのあの機械工場の煤ぼけた越屋根を突き破って
        夕空に暗く聳えてゐるのを見た
        ―――――――あゝ  日本は
        私は思はず聲をあげた
    

2012-04-23 Mon 17:55 | 古本

2012-04-23 Mon

永田助太郎詩集  (蜘蛛出版社)


3冊目です。1979年7月7日に蜘蛛出版社から発行されています。装幀は君本昌久です。彼は、1947年5月2日、焼酎のメチール禍に当って不慮の死を遂げています。40歳でした。「時間�機廚箸い�作品の一部を紹介しましょう。昭和12年11月に発表したものです。
   アスファルトの上で輾テン反ソクし ヘッヘッヘヘへーと
   名優ブル事は 尾が犬ヲウゴカす事は
   無限点の一点に於いて美を構成するカ知レンが
   永遠的でない
   外延ノ広キニナゲクナカレ 内包ノ深キニオドロクナカレ
   心ノ貧シキ者ハ幸ナリ 天国は汝の物なればなり
 彼の詩は、「詩というものに対するどのような概念をも破壊するにあった」と言われていますが、フリージャズのようなもので、言葉の洪水の中に、1フレーズでも、真実があれば十分「詩」なんだと思います。

2012-04-23 Mon 17:50 | 古本

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