2012-09-06 Thu

歌を通じて、自分や友人を語り、あるいはその曲を作ったミュージシャンを語るという本で、一気に読まされました。有名な曲なのに、何を歌っていたのか知らなかったものが多くありました。例えば、72年にヒットしたアルバート・ハモンドの「カリフォルニアの青い空」は、原題は「南カリフォルニアには雨が降らない」で、アメリカには来たものの、仕事にあぶれ、物乞いのようなことまでしたという原体験を反映したもので、曲調と異なり、明るい詩ではありません。また、スプリングスティーンの「ボーン・イン・ザ・USA」は、アメリカの愛国心発揚ソングではなく、アメリカの酷薄さを歌ったものです。
どうも、「ほとんどのアメリカ人は、歌詞なんかまともに聴かない」ようで、英語の分からない日本人と同じレベルです。安心しますね。
ボブ・ディランのわかりにくさについて語りながら、「程度の差はあるけれど、僕らはみんな転校生だ。この場所からあの場所へ。この人からあの人へ。こうして月日は過ぎる。僕自身も、偽装を捨てる日はまだ先のようだ。もしかしたらこの偽装の中にしか真実はないかもしれない。」と書いていますが、なるほどです。
2012-09-06 Thu 17:20 | 新刊本
2012-08-31 Fri

同じ選者による上林暁のアンソロジー第2弾で、今回は随筆から選んでいます。選者は、「上林は何冊も随筆集を出していますが、この本がこれら珠玉の随筆集の中にあっても色あせないで、長く読み継がれていくなら、選者としてこんなうれしいことはない。実際そのように夢見ながら、作品を選んでいったのだった。」と書いています。
上林は、戦争前も、戦争中も、戦争後も、古本屋歩きは、私の最大の道楽だったと書いていますが、古本についての話しや、知人の作家の話など、どれもおもしろい内容となっています。
選者が上林の文学にのめり込むきっかけとなったのは、「武蔵野」(現代教養文庫)を読んだことだったと書いています。いつだったかちらっと見てるんですが、そのときはなぜか買いませんでした。失敗でしたね。
2012-08-31 Fri 18:25 | 新刊本
2012-08-31 Fri

一人の小説家のアンソロジーですが、選者がどういう視点で作品を選んだのかが最大の見所でしょう。選者は、「身体の中には上林暁が入っているので、少し大げさに言うと、上林の作品なら何を読んでも、どの小説を読んでも楽しめてしまう。」と書いています。多くの作品の中から、7つを選び出すことは、苦しくもかつ楽しい作業であったことが想像されます。
さて選んだ理由ですが、最初の「花の精」は、最も好きな小説のひとつとあります。上林には、病妻物と呼ばれている作品群がありますが、そこからは最小限に抑えたということで、二つの作品を取り上げています。井伏鱒二は、二度目に倒れてからのものが一段といいとどこかで書いていて、選者も全面的に賛同し、その時期のものから一篇選んでいますが、初期のころの若々しい抒情的な作品も捨てがたい魅力があるとして、昭和6年に書かれた、この本のタイトルにもなっている「星を撒いた街」を選んでいます。
2012-08-31 Fri 18:21 | 新刊本
2012-08-27 Mon

ガタスタとは、ガター&スタンプの略で、ヴァージニア・ウルフが書評家の仕事を腐して使った言葉で、以前取り上げた、この著者の「ニッポンの書評」にも書かれていました。
ガターとは、本の内容を短く書き表すことで、スタンプとは、評価を下すということです。著者が書いているように、ガターには、読解力と技術が必要で、スタンプにはセンスと勇気が必要で、そのことを身をもって示したのが本書ということになります。
この本では、多くの作品が紹介されており、その多くは高い評価を与えているのですが、中には、著者としては評価できないと考える作品もあり、そんな作品に対しては、「村上春樹は一人でいい。そっと野におけ春樹節、なんである。」、「エンタメ路線にありながら直木賞受賞作よりもレベルが低い代物じゃん。」、「で、大人げない私はそういう小説が売れに売れていることが不満で仕方ないのです。ごめんね意地悪ババアでさ。」などと書いています。
著者は、誇りを持って、ガタスタ屋と名乗っています。
2012-08-27 Mon 18:13 | 新刊本
2012-08-20 Mon

これは、大阪の文芸雑誌、「海浪」に1992年から2004年まで連載されていたものです。著者は、あとがきで、「私は書き留めておきたかった。1950年代という多難な時代の空気を。そんな時代を喘ぎながら、あるいは世の中を馬鹿笑いに笑い飛ばしながら生き抜こうとした青年、学生たちのことを。」と書いています。
50年代の学生の姿が活写されていますが、我々の学生時代と決定的に違うのは、貧しさでしょうか。「みんな栄養不良の精気のない顔をしていた、ギトギトしたものが喰いてえなと言うのがみんなの合言葉だった。」と書いています。しかしそれ以外を除いては、戦後反動期といわれたこの時代と、自分が学生時代を送った時代と、驚くほどそんなに変わらないというのが感想です。それは、この作品が、あえて政治問題については触れず、学生生活を中心に書いたからでしょう。
2012-08-20 Mon 18:37 | 新刊本
TOP | 46-50/102件表示 10/21ページ : <前のページ [ 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 >> ] 次のページ>