Renkei日記 - 八十島法律事務所

2011-10-05 Wed

荻原魚雷 「本と怠け者」 (ちくま文庫)


 道の中央を歩くと、まぶしくて倒れそうになるから、いつも道の端の日陰を歩いていた天野忠、二十歳を前に「もう俺は、だめなんだ」と書き、その自分の言葉にとらわれ、悪あがきすることをよしとしなかった矢牧一宏、愚直に文学と酒を愛し、華やかな才能はなかったかもしれないが、それを補って余りある意志と情熱があった十返肇、酒に溺れて、ほとんど食事をとらず、自分自身の「とりあつかい方」を誤った石原吉郎、「労働と詩は両立するのか」と自問し、「私は根本のところでしないと考えている」と答えた辻征夫、縁側の椅子に座って、ラブミー牧場をながめながら、静かに息をひきとった深沢七郎、そういえば私はどちらかというと、仕事がさし迫ってくると怠けだす傾向があると言い放った梅崎春生など、一癖も二癖もある人たちについて、ローアングルによる観察者としての目で書かれています。
 著者は、常に作品よりも作者の生き方、表現者の葛藤、ものを作るときの姿勢や心のあり方に興味があると言っております。それはおそらく、この「斜陽の時代をどう生きていけばいいのか」という問題について、ずっと真摯に考えてきたからと思われ、随所にその生真面目さが出ています。決して怠け者ではないのです。

2011-10-05 Wed 18:32 | 新刊本

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