Renkei日記 - 八十島法律事務所

2012-08-15 Wed

山田稔 「北園町九十三番地」 (編集工房ノア) 2000年9月7日刊


 書名は、詩人天野忠の住所であり、この本は、著者と晩年の天野との交流をえがいたものです。交流は1982年ころから始まるのですが、当時天野は73歳になっていました。当時詩壇のなかのごく一部の人を除いて、誰も天野のことを知らなかったと著者は言っています。著者は、おっかなびっくり交流していくのですが、それは、天野に対する畏敬の念とともに、大野新から「二十世紀のいけずの老人」と称された、天野のキャラクターにありました。
 著者は最後にこう書いています。「思えば、かなり前から私は、すでにこの世にいない、生前からも世間の外に身を置いていたような、そんな人にばかり会いたがっている。それらの人たちと私を隔てる境界を、日々感じなくなりつつある。詩人の語ってくれた言葉、書き残してくれた詩や文章を介すれば、生と死の境はない。『はにかみ屋』の、意気地なしの私でも、これならひとりで訪ねて行ける。」

2012-08-15 Wed 17:31 | 古本

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