Renkei日記 - 八十島法律事務所

2012-07-31 Tue

伊藤整詩集 (光文社) 昭和29年11月10日刊


 「少々自慢」では、高田宏氏が取り上げています。高田氏は、昭和30年に光文社に入社し、この詩集の担当編集者の古知庄司の大学の後輩であった関係で、入手したかもしれないと書いています。この詩集は、伊藤整の詩のすべてを収めていて、あとがきによれば、昭和3年に小樽から上京してから、思想的にはアナキズムやマルキシズムが起こり、文学形式の上では、モダニズムが起こって、そういう時代思潮への関心と、初めての東京での生活が、それまでの北國の自然や素朴な生活から完全に私を切り離してしまい、そのために、私は次第に詩を書かなくなったしまったとあります。充分想像できますね。ではありますが、詩作していたころの自分や、その作品をとても大事に思っているとも書いています。
     「月夜にめぐり逢ふ」から
 よく見れば間違ひではない  
風のとほるたび
 木の葉は水のやうに月光をこぼしてゐる
 道にははっきり私の影が浮いてゐるから
 きっと肩から背中いっぱい
 私は月光をあびてゐるにちがひない

2012-07-31 Tue 17:30 | 古本

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