Renkei日記 - 八十島法律事務所

2011-05-20 Fri

ブラックスワン


 先日ブラックスワンを見てきました。一応話題の映画ですからね。この作品については、沢木耕太郎氏が朝日新聞に、「観客をドラマの中に深く入り込ませるのは、白鳥の湖という物語の持つ構造の力と、ニナ役のナタリー・ポートマンの研ぎ澄まされた肉体の力であるように思われる。」と書いていますが、まさにそのとおりで、逆に言うと、それ以外には見るべき点がないように思いました。ストーリイ的には平板であり、ホラー映画的な演出についてもやや興ざめな気がします。ただナタリー・ポートマンについては、アカデミー主演女優賞をあげる価値はあると思いましたね。
 さてそれに付けても、亡くなった淀川長治氏であれば、この映画をどのように紹介したのかなと考えてしまいます。淀川さんといえば、日曜洋画劇場が有名ですが、ずいぶん昔、淀川さんは、映画についてのラジオ番組を持っておりまして、それをよく聴いておりました。ストーリイの紹介が巧みで、思わず話に引き込まれてしまい、どんな映画もすばらしい傑作のように思えたことを記憶しています。また、辛口の評論もあったように思います。いまこうした話芸を持っている方は、小沢昭一氏くらいしか思い出せませんが、とても残念ですね。どんな映画でも、淀川さんが褒めていたらまあいいかという気持ちになったような気がします。

2011-05-20 Fri 11:40 | 映画

2011-05-10 Tue

映画としてのインテリジェンス


  シアターキノで、「私を離さないで」を見ました。原作を読んでから見たのですが、原作とはまた別の魅力にあふれた映画でした。原作では、キャシー、ルース、トミーの人間関係と、彼らに課せられた残酷な真実を、あたかも推理小説のように緊張感を持って少しずつ明らかしていき、しかもその二つのテーマを、密接に絡み合わせるという、構成にしています。主人公3人はやがてそれぞれ少しずつ自分たちの残酷な運命に気付いていきますが、その過程で、ルースはトミーに執着し、トミーは気が違ったかのように喚き暴れるといった態度を取りますが、キャシーは一人、運命を受け入れ、淡々とし少しも取り乱すということがありません。それは、キャシーが、自分たちの過去を振り返って回想するというスタイルで描かれているためであり、抑制の効いた、詩情溢れるものにしています。
 映画では、原作の魅力を損なうことなく、ある意味映画らしい分かりやすさに変えています。例えば、原作では、主人公のキャシーはトミーと別れることになっていますが、映画ではトミーの最後を看取っています。また、映画が始まってかなり早い段階で、彼らの残酷な真実を明らかにしています。原作には色々なエピソードがあり、キャシーとトミーがカセットテープを探す話など中には映画向きかなと思われるものもありますが、そうしたものは最小限にして、原作同様、抑制の効いた詩情溢れる作品に仕上げています。そこに、映画としてのインテリジェンスを感じました。  
  

2011-05-10 Tue 09:57 | 映画

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