2011-09-08 Thu
三島由紀夫と思しき人物が、27年間の服役を終えた後80歳を超えて社会に戻ってきたらという設定で書かれています。
著者は、新聞のインタビューで、「(この)小説には、私自身の夢想も入っていて・・・・・(主人公に)夢を託したんです。」と答えています。
しかし、その夢想が、石膏の人体模型だったり、塔で月の光を浴びることだったり、秘密クラブだったりと、これを幽遠な幻想性が漂うと褒めている人もいますが、ちょっと陳腐な感じがしましたね。まあ27年間社会と断絶していた老人の夢想だとすれば、それもありなのかもしれませんが、そんなリアリズムは感じられません。
読み進むにつれて、三島とは関係なくなってくる感じです。あの最後のバルコニーでの演説を思わせるシーンも出てきますが。
もし老いの問題について書きたかったのであれば、何も三島をモデルにしなくてもと思いました。
2011-09-08 Thu 17:30 | 新刊本
2011-08-22 Mon
二人の社会学者によるキリスト教の入門書です。昔から、キリスト教を理解しなければ、ヨーロッパの近現代思想の本当のところ、あるいは西洋とは何かは分からないし、現代社会もわからないと言われております。そこでお二人は、キリスト教ときわめて異なる文化的伝統の中にある我々日本人のために本書を出したと言っております。
本書を読んでなるほどねと思ったところがいくつかあります。例えば、神との契約を守っていれば、たとえ国家が消滅しても再建できると考えていたため、ユダヤ教では日常生活の一切合財を律法で定めたことや、全知全能の神が造った世界になぜ悪があるのかについては、世界が不完全であるからこそ信仰が生まれると考えていることや、キリスト教の説く愛は、ユダヤ教の律法が形を変えたもので、隣人愛の一番大事な点は、人を裁くのは神であって、人が人を「裁くな」ということであるということなどでした。
2011-08-22 Mon 17:30 | 新刊本
2011-07-29 Fri
画家、作家そして装幀家である著者が、これまで手がけてきた本について、その作者の思い出とともに語ったものです。
彼は、「文学者の心配をひきうけてたくさんの装幀をやっているうちに、文学者からの『生き方』の影響を受け、造本力より、僕の人生の色彩を増やしたように思う。」とあとがきに書いています。
確かに彼は、装幀を頼まれると、テキストを読み込むことは当然として、作者と付き合い、時には作品の舞台となった土地にも出掛けたりしています。それを貧乏性から来ていると、自嘲気味に言っていますが、そのため生霊を見たり(埴谷雄高)、絡まれたり(中上健次)、編集者と午後4時から午前零時過ぎまで黙々と酒を飲み続けたり(月山の装幀)、故人を偲んで一升酒を飲んだり(三浦哲郎)、体が弱っているので作者の妻から2,30分にしてくださいと言われていたのに5時間も話し込んだり(真壁仁)、すごいことだなあと思うのでした。
2011-07-29 Fri 17:00 | 新刊本
2011-07-19 Tue
ぜひ新刊を出して欲しいウエッジ文庫の1冊です。徳田秋聲、瀧井孝作、井伏鱒二、梶井基次郎、尾崎一雄ら実際に親しく交わった小説家たちを回想する随筆で、どれもこれもとても面白く読めました。
中でも川崎長太郎会見記というのがあるのですが、川崎の話し言葉が、「〜たんだヨ」、「〜思ったヨ」、「〜それにしてもよオ」、「〜どうかと思うナ」となっていて、いかにもという感じで、川崎の朴訥そうで、したたかな感じが良く表れているような気がしました。
また谷崎の細雪について、この作品は「今まで筆を尽くして書いてきた如く擬古的生活への没入で、その没入振りを描くことが最大眼目になっている。」と分析しており、なるほどなと思いました。結局関西に移っても変わらなかったということですね。
ほかに取り上げられるべき作家として、園池公致、三宅幾三郎、松本泰、山崎俊夫、小島政二郎、蔵原伸二郎、白石実三、福永挽歌、藤澤清造、中島直人、佐々三雄らの名を上げています。気に留めておきましょう。
2011-07-19 Tue 18:00 | 新刊本
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3番出口直結 南大通ビル9階
●市電「中央区駅前」停留所より
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●近隣に有料駐車場有り
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