Renkei日記 - 八十島法律事務所

2012-01-26 Thu

青木正美   ある「詩人古本屋伝」


 著者は、古書店を経営していて、これまで古書や古本屋という商売に関する本を何冊も書いています。
 この本は、昭和62年にたまたま市場で仕入れたものの中に、日記があり(こんなものも出回るのです)、ドン・ザッキーという名の詩人を知り、それが、同業者ではないかと考え調査をし、彼を知っている人や本人さらにはその子どもにも会いに行くという話です。
 この本の解説を書いている内堀弘さんがいうように、ドン・ザッキーらが活躍した1920年代のダダイストやアヴァンギャルドたちの多くは、行方不明のままです。時代の先端へ駆け上がろうとした彼らの姿は次第に明らかになってきていますが、そこからどこへ帰っていったのか、その道筋を記録したものはなく、この本はそうした姿を初めて映し出したものです。
 この本と一緒に出している書影は、大正14年5月5日にドン社から発行されたドン・ザッキー詩集「白痴の夢」です。ドン・ザッキーの長男が経営する印刷会社が発行した復刻版で、造本・装幀ともに原型のとおりとのことです。

2012-01-26 Thu 18:50 | 新刊本

2012-01-23 Mon

早川義夫 「ラブ・ゼネレーション」  (文遊社)


 元本は、1972年に出版され、その後1992年に文庫化され、さらに未収録原稿を追加して出されたのがこの本です。1968年から1972年にかけて主に音楽雑誌に書かれたものがまとめられています。
 今回の復刊に際し、早川氏は、「読み返してみると、今、自分が思っていることと、ほとんど変わっていないことに気がつく。」と書いています。実感なのでしょう。
 また彼は、こうも書いています。「『友よ』という歌に代表されるように、みんなで合唱すること、みんなが同じ思想を持って行動を起こすことに、当時から僕は肌寒さを感じていた。全員が一人の女性を愛することがないように、全員が同じ思想を持つことは、嘘なのである。」
 早川氏は、ジャックス解散後、本屋さんを始め、近年は再び音楽活動をしていますが、音源が入手し辛いですね。困ったものです。

2012-01-23 Mon 18:28 | 新刊本

2011-12-08 Thu

ピーター・バラカン  「音楽日記」 (集英社インターナショナル)


この方は、1974年に英国から日本に来ています。日本のどこが良かったんでしょうか。ふしぎです。80年代に、ベストヒットUSAや深夜にやっていたCBS60ミニッツで見ていました。そのころから日本語を流暢に話していましたが、書いたものを読んでも、とても外国人とは思えません。
 ただやはり英国人と思わせるのは、カタカナ表記です。ご本人もこだわっているところで、例えば、ヴァン・モリスン、ブランフォード・マーサリス、ノーラ・ジョーンズ、マイルズ・デイヴィス、ジョーニ・ミチェルが正しいのです。

2011-12-08 Thu 17:33 | 新刊本

2011-12-08 Thu

渋谷陽一・松村雄策 「渋松対談 赤盤青盤」 ロッキング・オン


ロッキングオンという雑誌を毎月読んでいたのは、今から30年以上も前でした。当時もこの渋松対談は名物企画でしたし、毎号楽しみにしていました。雑誌自体は買わなくなってしまったのですが、この対談が、単行本化されるたびに買っています。
 この対談は、特にためになるとか、中身があるというわけではないのですが、中高生時代に戻ったような気分になれるといいますか、はるか昔、友人とこういうのりで無駄話をしていたことを思い出されるところがいいと思います。
 今回この対談が実は架空対談で、実際には一人で書いていたという衝撃の真実が明らかにされました。考えてみれば、この雑誌の名物企画に架空対談というのがありました。今と違い、大物ロックミュージシャンの単独インタビューなどできなかったでしょうから、さも言いそうなことを言わせるこの企画もとても楽しいものでした。
これだけ長い間一定のクオリティーをもって対談することなど現実には不可能であり、だまされましたが、結局これが正解だったのでしょう。
 それにしても、村松氏にはまた本を書いて欲しいと思っています。

2011-12-08 Thu 17:25 | 新刊本

2011-11-26 Sat

姜尚中・中島岳志 「日本」 (河出文庫)


 元本のタイトルは、「日本 根拠地からの問い」でした。なぜ「根拠地」なのかというと、現代の日本の人々は、単なる労働環境やセーフティネットの喪失ではなく、「生きる場所(=トポス)」を喪失してしまっているのではないか、それを時の政治家たちは、排外的ナショナリズムと新自由主義によって埋め合わせをしようとしているのではないのか、という問題意識から、地方、熊本、天皇、右翼、保守、民族、文学、戦後という視点から、パトリ(=故郷、原郷)をさぐり、トポスの再構成を試みようとしたものです。
 さて元本の元となった対談から4年後になされた対談が、この本に納められていますが、最初の対談当時より、さらに政治に対するシニシズム(さめた気持ちあるいはしらけた気分)が蔓延している状況の中で、結論めいたものはないのですが、「過去を遡行しながら未来を見つめていくことが重要である。」としています。そして、これからの共同体は、異質な存在を内包していかなければならないとしています。

2011-11-26 Sat 10:47 | 新刊本

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