2012-02-23 Thu
著者は、この本について、次のように書いています。
幼いころ虚弱児で、不適格者の思いがつよく、ぜんたい何事にも、つねづね無能非才を知らされてきた。それが、17・8歳の大学入学前後に、難破するそのたびごとに避難ブイのようにあった面々を取り上げた。
その面々とは、天野忠、和田久太郎、尾形亀之助、淵上毛銭、鈴木しづ子、辻まこと、つげ義春です。
その結果悟ったのは、およそありとあらゆる悪なるは力をその源にしているのであれば、力を抜け、弱いものは弱いままに、足らぬものは足らぬままに、病むものは病むままにということであった、そうです。
2012-02-23 Thu 18:53 | 新刊本
2012-02-15 Wed
人間の心は、毎日、矛盾したことを幾度となく考えるものだ。人の心は、都合のよい嘘を信じようとするものだ。しかし同時に、自分をなぐさめるための嘘が必要になるような、痛ましい真実もちゃんと理解している。そして人の心は、嘘と真実を同時に信じた自分に罰を与えようとするのだ。
以上イチイの木の怪物の言葉でした。
2012-02-15 Wed 19:59 | 新刊本
2012-02-15 Wed
痕跡本とは、古本の中に、前の持ち主の「痕跡」が残された本のことです。
古本の中にレシートが挟まっていたくらいであれば、面白くもなんともないのですが、この本に出てくる「痕跡」は、結構すごいものがあります。ここまですごいと、市場には出ないので、古書店主ならではの著作と言えます。
マイナス要素を逆手にとって、しかもそこに物語性を見出したところが、とてもすばらしいと思いました。
2012-02-15 Wed 19:47 | 新刊本
2012-02-13 Mon
澁澤が、日本の作家について書いたものすべてを収録したものです。本書で触れた作家は41名、意外なところでは、川崎長太郎についても書いています。
印象的なフレーズをいくつか紹介すると、
古いものは新しく、新しいものは古いのである。表現の世界では、そうしたパラドックスがつ ねに起こっている。
詩とは、いわば散文の病気である。
超低空を飛ぶには、高等技術が必要だ。
彼は言葉を殺してしまったらしいのである。
この本の解説者は、華麗な「殺し文句」といえば、小林秀雄であり、一見すると澁澤とは正反対に見えるが、どちらも様式、スタイルにこだわっていたという点で、共通項があると指摘しています。
2012-02-13 Mon 18:34 | 新刊本
2012-02-03 Fri
13ものお話からなる短編集です。主人公は、親が詩人であったり、夫が詩人であったり、自身が詩人であったり、いずれも言葉に関する仕事に関係している人たちです。
作者は言っています。詩に長く関わるうちに、現代詩や詩人、詩を取り巻く世界に対する憎しみのような感情が生まれてきた。その憎しみの毒は、当然自分にも回ることになり、毒は時に「自虐」に変化して、言葉の節々に溜まる。
ある主人公には、「詩を書くために、もっと痛みが欲しい。」と祈らせたり、「詩という言葉は不吉である。耳で聞くと死と区別をつけることができない。」と言わせたりしています。
2012-02-03 Fri 18:49 | 新刊本
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