Renkei日記 - 八十島法律事務所

2012-05-07 Mon

許光俊「問答無用のクラシック」 (青弓社) 2007年3月23日刊


 著者は、「問答無用とは、何でもかんでも切り捨てて殺してしまうという意味ではない。ある一瞬の邂逅。そのすれ違いの瞬間に相手の本質を見極めようとするが、それが見えたか見えないか、またたく間に離れてしまっている。そういうイメージである。邂逅やすれ違いはただ一瞬起きるだけであって、再現不能であり、問答など起きようはずがないということ。」と言っています。まあ、当て逃げに近いですね。例えば、
 「基本的には、日本は、お金がないと快適が手に入らない国、ひいては幸福になれない国なのだ。そして人々は、こうした構造そのものを変えようとせず、自分がお金を儲ければいいのだと考える。典型的にアジア的である。いったい豊なのだかそうでないのか、分からないようないびつな風景画に日本中にあふれている。」
 一応、クラシックの評論となっています。

2012-05-07 Mon 17:53 | 新刊本

2012-04-22 Sun

書影でたどる関西の出版100  (創元社)


関西出版の軌跡を、明治維新以降の百年余に限って、古書として残された現物に基づきながら辿ってみようという試みで、もとは大阪「産經新聞」の文化欄に連載されていたものです。
 こう書くと何か学術的な本のような気がしますが、要は、古書好きが、原則として今は廃業してしまった、かつて関西に存在した出版社が出していた古書を紹介するというものです。ただ普通の古本物と違って、使用している紙も良く、図版も豊富で、やや贅沢な作りになっています。
 この本で紹介されている本の中で、私が持っているのは3冊のみでしたが、順に照会していきます。

2012-04-22 Sun 13:39 | 新刊本

2012-04-16 Mon

岡崎武志 「ご家庭にあった本」 (筑摩書房)


古本屋巡りのつれづれに、初発の衝動で買った本を、仕事の合間にパラパラとめくり、時代の空気を感じる、そして参考になる別の本を読みながら、その本が背負った時代性を探り当てるという「勉強」の結果が、この本ということになります。
 これは1冊の本から、それに関連する話題を取り上げ、「昭和」という時代の手触りのようなものを示すという、なかなか簡単には書けない本なのでした。
 欲を言えば、すべての本の書影を出して欲しかったと思いました。

2012-04-16 Mon 18:16 | 新刊本

2012-04-04 Wed

中山康樹 「かんちがい音楽評論」  (彩流社)


著者は、最近本を出しまくっている元「スイングジャーナル」の編集長です。
 「日本はいま、『洋楽は定着しなかった』という結論に向かって進んでいる。」
 「音楽評論家以外の人たちが音楽について書くことが一般化し、その結果、『音楽評論というもの』の形や概念が崩壊した。」
 「いかに多くの『NO』を抱え込み、書き、伝えることができるか、そうすることによって、はじめて本来の『YES』が伝わるのだろう。」
 「難解だからこそ楽しいものもあるという価値観は、いつ、消されたのか。」
 ここでも、現代社会の抱える問題が、音楽評論という世界を通して語られています。我々は、被害者であると同時に加害者でもあるわけで、そこにやりきれなさを感じますね。

2012-04-04 Wed 18:21 | 新刊本

2012-04-04 Wed

騒恵美子 「ライブ アット 騒」  (株式会社ディスクユニオン)


 著者は、70年代の終わりから80年代の初めにかけて、ライブハウスのオーナーをやっていた方で、表現行為に対する真摯な姿勢には、ものすごいものがあります。
 興味深いのは、阿部薫や鈴木いづみとの交流について書かれているところで、阿部については、こんなことを書いています。
     彼の音は、いつもこんな問いかけをしてきた
     ―お前は本当に自分と向き合い、自分が何者かを見つめる作業をしているか。
     何処から来て何をするために生かされているのか、真剣に考えながら
     今、この瞬間を生きているのか。―
     だから阿部の音は怖かった。
 阿部が亡くなった今となっては、その音の真実性を確認する術がありません。
 著者も2011年10月20日に亡くなっています。
     

2012-04-04 Wed 18:16 | 新刊本

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