2014-04-08 Tue
バッハからグールドまで、9人の作曲家、音楽家たちについて書かれたエッセイです。ご自分の音楽や演奏家たちの受容史を交えながら、核心的なことに触れています。例えばバッハについては、20世紀の大衆社会が到来するまで忘れられた存在だったのですが、それが変化したのは、バッハの音楽は、超時代的な、あるいは未来的な平等や対等や均衡や相互的なコミュニケーションの理想を、精緻な設計図=楽譜によって後世に残したからだと分析しています。また、モーツァルトについては、現代が起承転結や脈絡を失い、われわれが刹那的になればなるほどモーツァルトはリアリティを持って迫ってくるとし、20世紀に新たに発見しなおされた作曲家であるといいます。フルトヴェングラーについて、解像度の低い音のほうが、魅力的に聞こえる理由について、ドイツの森のような鬱蒼としたサウンドこそが、彼の求めていたサウンドだと思うと書いています。
2014-04-08 Tue 19:04 | 新刊本
2014-04-04 Fri
著者が、生前交流のあった花田清輝、中野重治、長谷川四郎、菅原克己、辻征夫について、書いたり話したことをまとめた本です。
捨て身であったということは言葉を変えれば、純粋だったということでしょう。
花田は、芸術は芸術運動のなかから生まれるとの信念に忠実でしたし、中野は、優秀な庶民の魂を信じていました。長谷川は、ただ単に生きてあること、すみずみまで全的に生きてあること、これだけが問題であるとし、幸福だとか不幸だとか苦しみだとかは、その構成分子なのであると語っていました。菅原は、人生は浅ましい勝ち抜き戦なんかではない、負けても負けても自分に正直であることにへこたれないと考えていました。そして、辻は、詩人でしかありえない運命に捨て身でした。人間がこの世に生きてあることのいわくいいがたい味わいを言葉を織ってさながらに掴みとる、それこそいのちがけの繊細な作業に対し勇敢でした。
2014-04-04 Fri 19:02 | 新刊本
2014-03-27 Thu
11の短編からなる小説集です。解説を書いている岩阪恵子は、この11の短編に底流しているのは、木山が21歳のときに書いた、「妙な墓参」という詩から受ける感じと同じであると書いています。その詩とは、
十八で死んだ処女の墓に参った。
話したこともなく
したしかったのでもなく
恋してゐたのでもないけれど
山からの帰るさ
つい墓に出て
そっと野菊をそなへた。
そしたらその女が妙に
愛人のやうに思はれて来た。
秋の陽はやわらかに照って
へんにたのしく
へんにさびしかった。
「口婚」という作品がありますが、これなどつげ義春の「赤い花」を思わせます。
2014-03-27 Thu 19:50 | 新刊本
2014-01-07 Tue
著者は、古本に関する多数の著作がありますが、昭和44年から、平成4年まで創元社に勤務していました。
あとがきに代えての中で、「私は今でもときおり憶い出す。大阪市北区樋上町にあった木造二階建ての旧社屋のことを」と書いていますが、内容は、創元社で働いていたときの思い出や、創元社の歴史についての記述は少なく、創元社が出していた本や、創元社にまつわる人々(小林秀雄、青山二郎、隆慶一郎、佐古純一郎、丸山金治、東秀三、保坂富士男など)が出した本について書いています。 同じ著者のほかの著作と同様に、1冊の本から次々と話が展開していき、ひとつの項目が終わったあと、追記もあるというスタイルで書かれています。
2014-01-07 Tue 17:09 | 新刊本
2013-12-03 Tue
これは、熊本で発行されていた「詩と真実」に掲載されていたもので、1949年から1953年の間に書かれた4つの短編が収められており、1974年に一度出版されています。
発行者の比嘉加津夫は、この作品集について、「無名で暗い闇をかかえている文学青年の、ある意味で文学に対して純粋に向かっていくひたむきな輝きがあるのである。」と評しています。
「酒」から
「私は文学の勉強よりも、酒に忠実に仕えるために苦労を重ねた。くさぐさの懊悩をねぎらうために酒となり、酒盃を何十杯と重ねている中に、その酒が酒のための酒となってしまうのであった。」
2013-12-03 Tue 18:30 | 新刊本
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