2012-07-31 Tue
「少々自慢」では、高田宏氏が取り上げています。高田氏は、昭和30年に光文社に入社し、この詩集の担当編集者の古知庄司の大学の後輩であった関係で、入手したかもしれないと書いています。この詩集は、伊藤整の詩のすべてを収めていて、あとがきによれば、昭和3年に小樽から上京してから、思想的にはアナキズムやマルキシズムが起こり、文学形式の上では、モダニズムが起こって、そういう時代思潮への関心と、初めての東京での生活が、それまでの北國の自然や素朴な生活から完全に私を切り離してしまい、そのために、私は次第に詩を書かなくなったしまったとあります。充分想像できますね。ではありますが、詩作していたころの自分や、その作品をとても大事に思っているとも書いています。
「月夜にめぐり逢ふ」から
よく見れば間違ひではない
風のとほるたび
木の葉は水のやうに月光をこぼしてゐる
道にははっきり私の影が浮いてゐるから
きっと肩から背中いっぱい
私は月光をあびてゐるにちがひない
2012-07-31 Tue 17:30 | 古本
2012-07-31 Tue
読んで感銘を受けた本を紹介するという企画はこれまでたくさん出ていると思いますが、人に自慢するという観点からのものは、これまであるようでなかったと思います。編者である保昌正夫は、あとがきで、「少々自慢」とは、はずかしながらの意である、はずかしながらが在って、書きものは通用すると書いています。
「少々自慢」の理由ですが、希少性のほかに、内容からというのが最も多く、その本によって、文学が見えたとか、人や本が、それに接する人間を感動させるということは、そこに鏡のように自分の気付かなかった己の姿を見るからではないかと書いている人もいます。
この中で取り上げられている本の中で持っているものは、伊藤整詩集、丸山薫「北國」、加藤一雄「無名の南畫家」の3冊で、加藤一雄は以前取り上げていますので、次に前の2冊を紹介します。
ちなみに、欲しいと思った本は、稲垣足穂の「第三半球物語」(金星堂)1927年3月20日刊です。
2012-07-31 Tue 17:27 | 古本
2012-07-14 Sat
定価50円。吉岡実が、ゾッキ本として購入したという詩集です。
はしがきの中で、西脇は、「自分の中にもう一人の人間がひそむ。通常の理知や情念では解釈の出来ない、割り切れない人間がゐる。これを自分は「幻影の人」と呼びまた永劫の旅人とも考える。この詩集はさうした「幻影の人」の立場から集めた生命の記録である。」と書いています。
無限の過去の或時に始まり
無限の未來の或時に終る
人命の旅
この世のあらゆる瞬間も
永劫の時間の一部分
草の實の一粒も
永劫の時間の一部分
有限の存在は無限の存在の一部分
2012-07-14 Sat 15:50 | 古本
2012-07-13 Fri
こちらが元本で、当時としては価額も高かったとありますが、2900円です。
1955年からその当時まで折々に書いたエッセイのすべてを収録したとあり、装幀も著者自らしています。
増補版では、意にみたない五篇を省いたとあります。どの辺が意にみたなかったのか気になるところです。吉田一穂の「羅甸薔薇」を神保町の露天市でゾッキ本として出ていたのを買ったというところでしょうか(またしてもゾッキ本)、あるいは私のもっとも気に入った作品は「故園の書」としながら、書斎のどこかに埋没していると書いているところでしょうか。また、金子光晴について、臆面もない女への執着だと書いているところでしょうか。
2012-07-13 Fri 18:00 | 古本
2012-07-13 Fri
元本は、1980年に思潮社から出されています。この元本は、部数も少なく、当時としては値段も高かったことから、今回再刊されることになったとあります。
内容は、エッセイということですが、自分の詩集についての話や、義父である和田芳恵のこと、加藤郁乎や飯島耕一との出会いについて書かれています。また中原中也の署名入りの「山羊の歌」を所有しているとか、西脇順三郎の東京出版刊の「旅人かへらず」と「あむばるわりあ」の2冊はゾッキ本を貰って、真に魔力ある詩に驚いたといっています。それにしても、ゾッキ本として出ていたことに驚きます。
2012-07-13 Fri 18:00 | 古本
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