Renkei日記 - 八十島法律事務所

2011-09-10 Sat

三國一朗 「鋏と糊」 ハヤカワ文庫


 ハヤカワ文庫は、SFと全く関係のないエッセイも出していたんですね。 
 この本は、スクラップについて書かれたエッセイですが、内容もさることながら、ジャケットがよいですね。安西水丸氏の作です。

2011-09-10 Sat 11:26 | 古本

2011-06-16 Thu

尾形亀之助 色ガラスの街


 1年ほど前にこの詩集を手に入れました。勿論復刻版です。オリジナルは、大正14年11月に発行されており、たまに市場に出ることがありますが、とても高くて手が出ません。ただこの復刻版は非常に良くできていて、昨今の味気ない印刷物とはかなり味わいが異なります。
 さてこの詩集は、尾形の第1詩集で、「夢のやうに美しい」(当時の広告のコピーより)詩集です。この詩人については、辻潤、高橋新吉、草野心平らが語っておりますが、まとまった評伝として、正津勉の「小説尾形亀之助」があります。正津氏は詩人ですので、かなり立ち入った作品分析もしておりとても面白い読み物となっています。
 彼は一時絵を書いていたことがあり、その作品の一つが左の写真で、大正11年作で、タイトルは「化粧」となっています。このとき彼は22歳でした。
 優れた芸術家の多くは、生活能力がなく、性格的にも破綻していますが、彼もご他聞に漏れず、そうした面があったようです。実家の破産(東北の造り酒屋でした)によって、彼の生活も立ち行かなくなり(それまでは実家の援助で生活していました)、最晩年に役所に勤めるのですが、勤まらず、42歳で、誰に看取られることもなく亡くなっています。死因は、全身衰弱による窮死とのことです。そう、辻潤と同じでした。
       秋は、綺麗にみがいたガラスの中です。

2011-06-16 Thu 18:16 | 古本

2011-06-03 Fri

辻潤エッセイ選  絶望の書 ですぺら 


 前回、中原昌也は辻潤に近いと書きましたが、瓜二つではないかと思っています。それは例えば、「私にはだがどうも今の日本で製造される文学が大半なくなっても別に苦にはならない。なにを読んでも面白くないのだから。」「意味があるということは必ずしも価値のあるということにはならない。千年も前に腐れ果てたような意味を今さらながら繰り返したところで、別段価値があるわけじぁあるまい。」(ですぺら1924年3月)、「なぜもっと書かないのか?書きたくないから書かないのだ。なぜ書きたくないのか?書くことがないからだ。なぜないのか?書くに価することがないからだ。」(ものろぎや・そりてえる)、「私は自分の信じることもできぬ主義をふりまわしたり、感じもしないことを饒舌ったりすることはどうしても出来ぬ性分である。」(にひるの泡1927年3月)といったところに現れていると思います。こうしたものを読むと、時代の雰囲気というものが今と変わっていないし、同じように閉塞感を感じている人がいるんだなあと思います。
 彼は昭和19年11月24日にアパートで餓死し翌日に見つけられています。助けを求めることも出来たでしょうに、おそらく緩慢な自殺だったのではないかと思います。

2011-06-03 Fri 20:18 | 古本

2011-04-19 Tue

無名の南畫家


先日、ネットで日本美術出版社版の加藤一雄の「無名の南畫家」を購入した。
古書好きには夙に有名な本である。依然どこかで、この本のことを「なんかいいよね。」と評している人がいて、一体何がいいんだろうと気になっていた。
話は、著者の少年時代ということになっている。薄ぼんやりだった私は、すべてのアカデミズムを心の底から軽蔑していた祖母の計らいで、二人の家庭教師を付けられることになった。そのうちの一人が、無名の南画家であった。ストーリイは、この先生との交情を軸に流れていき、最後は、この先生がひっそりと息を引き取るまでが描かれている。
加藤は、美術の先生で、本職の小説家ではなかったが、実に巧みに書かれている。そこで感想であるが、やはりなんかいいよねである。この先生は、行き当たりばったりのことしか言わず、収入もデパートの包装紙のデザインをしてわずかな収入を得ている程度で、貧乏であり、しかも孤独な人であった。晩年大きな仕事の注文が入ったが、結局仕上げることができず、無名のまま人生を終えている。
人はそもそも孤独なのであり、それ故に、あるいはそうであるからこそ、いろいろあがきながら力強く人生を送っていく事の大切さを身を持って、少年に教えたのである。

2011-04-19 Tue 14:52 | 古本

2011-03-22 Tue

 詩集 終の栖 城左門

 詩集 終の栖 城左門
 爾来古典と呼ばれる書物は実に印象深いフレーズで始まる。春はあけぼのとか、祇園精舎の鐘の音とか、男もすなる何とかとか、行く河の流れは絶えずしてとか。
 しかし、この日記は古典ではないので唐突に始まる。
3.11の大地震の時、私は東京にいた。地震の直後に購入したのが写真の詩集である。『詩集 終の栖 城左門』
箱の状態が悪いので安かった。地震が収まった時に、とっとと空港に向かえば良かったものの、高をくくって神保町辺りでぶらぶらしていたため、結局そこから浜松町まで歩いた上に、モノレール駅の改札前で一泊する羽目になってしまった。全く馬鹿者である。
  しかしふと考えるのである。あのままどこも寄らずに空港に向かえば、その日のうちに帰宅できたかもしれないが、城左門の詩集は手に入らなかったかもしれないと。

2011-03-22 Tue 13:20 | 古本

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