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2013-08-09 Fri
加能作次郎作品集(講談社文芸文庫) 2007年1月10日刊
加能は、昭和16年8月に56歳でなくなりますが、作品は大正年間に大半が出版され、昭和に入ると作品が少なくなります。昭和初期の、プロレタリアだとか、モダニズムといった風潮が彼の作風と合わなかったという事でしょう。
しかし、昭和15年8月「中央公論」に発表した「乳の匂い」は、もっとも知られた作品です。
これは、著者と思しき少年と、彼の義理の従姉との交流を描いたお話です。この作品のなかで、この従姉が、少年の目に入ったごみを乳汁で洗眼するというシーンがあります。
荒川洋治は、解説で、「母なるものへの思いがしたたる」と書いていますが、私は母ではないだろうと思いましたね。素直に。
加能の作品には、随所に昔の日本語のなんともいえないあたたかみみたいなものが伝わってきます。荒川は次のように書いています。
「『昔あったとい。』『聴いたわね。』の声は美しい。そして楽しい。その声は優しい文字、あたたかい言葉となって、世の中へ届けられた。」
2013-08-09 Fri 18:11 | 古本
2013-08-09 Fri
加能作次郎「世の中へ」 (新潮社) 大正11年5月28日刊
大変古い本ですが、新潮社の中篇小説叢書の1冊として出された本で、価格は75銭でした。加能は明治18年に石川県で生まれ、いろいろ苦労した挙句、大正7年に読売新聞に連載された、この「世の中へ」という作品で、作家としての地位を確立します。
この作品は、加能の13歳ころから15歳ころまでの生活を描いたもので、自伝的作品です。
主人公は、商売をしている伯父を頼って、石川県の僻村から京都に出てくるのですが、期待に反し、中学に行かせてもらえず、伯父の家で働かされることになります。それまでとは全く違う生活に戸惑い、ろくに口も聞けなかったのですが、最後には「『おい出やあす。おあがりやあす。』『お帰りやあす。』と、声を張りあげて間断なく呼ばはって居る」まで成長するというお話です。
2013-08-09 Fri 18:08 | 古本
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