Renkei日記 - 八十島法律事務所

2013-02-13 Wed

上林暁「聖ヨハネ病院にて」 (新潮文庫) 昭和24年8月20日刊


 先に紹介した「ツェッペリン飛行船と黙想」の中に、私の代表作というのがあって、上林は、「野」について、「(この作品は、)具眼の士によって私的には認められながら、それが公の場で認められることがなかった。広く読まれる性質の作品ではないが、私の魂の真髄がこめられている作品であると自認している。」と書いています。
 この「野」という作品が収められているのが、この作品集です。
 この文庫の解説は、伊藤整が書いているのですが、この作品について、「この作品は態度としても一貫していないし、その内面告白も多く蔽われている。ある部分では戦闘的に生に対して強く出、ある部分は自己の存在を疑い、ある部分は抒情し、ある部分は夢想し詠歎している。しかし描くこと、感ずること、生きることが一つになろうとする芸術家の生命の誕生の苦しみという点では一貫した重厚なものがあり、ここを経た人はどのようなことにも屈服し切らないと推定される強さに達している。」と、評しています。

2013-02-13 Wed 20:52 | 古本

2013-02-07 Thu

上林暁 「ツェッペリン飛行船と黙想」(幻戯書房) 2012年12月9日刊


 上林は、筑摩書房から全集が出ているのですが、この本は、全集に未収録となっていた未発表原稿と媒体発表の作品を集成したものです。
 いろいろ気になったところがあるのですが、たとえば、井伏鱒二について、「井伏氏は、モーパッサンのある作品について、『あの最後の方の一行アキは素晴らしいねえ』と言ったことがある。一行アキの効果まで読み取る人である。」、戦後の小説ベスト5というアンケートに答えて、遥拝隊長(井伏鱒二)、鳴海仙吉(伊藤整)、名人(川端康成)、斜陽(太宰治)、虫のいろいろ(尾崎一雄)を挙げています。
 この本の最初に、彼の詩が紹介されていて、そのタイトルが、この本の書名にもなっているのですが、当時の時代の雰囲気を反映したモダンなもので、驚かされます。

2013-02-07 Thu 17:30 | 新刊本

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