2013-02-28 Thu
元本は、2002年7月に晶文社から発行されています。文庫化にあたり、一章分増えています。
父や母の死、その後の相続をめぐる兄弟間の争いについて書いている中で、こんなことを言っています。
「言葉は、喋れる人のためにあるのではなく、もしかしたら、喋れない人のためにあるのではないだろうか。自分の都合のいいように、『自分の意見』を言うためにあるのではなく、『正しいこと』、『本当のこと』を探すために、言葉はあるのではないだろうか。」
詩的な文章だと思います。
2013-02-28 Thu 21:40 | 新刊本
2013-02-26 Tue
「JAZZ雑文集」に続くDU文庫からの第二弾です。
前半はジャズの鑑賞法、後半は、これからも続くいい曲探しの旅という副題がつけられています。
私自身は、この人の好みとは若干違っていて、この人が勧めるものは、避ける傾向があるのですが、文章は好きです。例えばこんなところ。
「ジャズの楽しみの本質とは何か。さあ言うぞ。こういう誰も知らないディスクを夜中の二時ころ、『ヒッ、ヒッ、ヒッ』と笑いながら一人静かにライブラリーから取り出しトレイに収め、この盤の聴きどころは5曲目の<ノー・ベース>にあるのだぞよ、知らないだろう、知っているのは全世界で俺を含めて三人ぐらいだろうなあ、とホクソ笑んで一人悦に入る。それがジャズの楽しみの極限的本質というものなのだ。」
まったくそのとおりなのです。
2013-02-26 Tue 21:31 | 新刊本
2013-02-21 Thu
ボン書店がらみで、こんなものもあります。これは、昭和7年5月から昭和9年8月まで17巻ボン書店から出版されていた「マダム・ブランシュ」という雑誌の、表紙、奥付、広告の写真と、目次をまとめたものです。
構成は、黒木まがりという方で、よく集められたなと思います。
この雑誌の編集は、鳥羽茂がしており、瀧口修造、北園克衛、春山行夫、山中散生、左川ちか、阪本越郎、井上多喜三郎などそうそうたるモダニストたちが寄稿しています。
2013-02-21 Thu 21:28 | 新刊本
2013-02-21 Thu
山中の第一詩集がこれです。タイトルは火串戯と書いて、火遊びと読みます。山中は、シュールレアリストであり、シュールレアリスムの正しい紹介者でした。
なので、
君はうなぎ丼あなたは鯛めし僕は癇癪
折鞄は網棚へ、明日なら歳が喰べられた
というものもありますが、こんなのもあります
雨の脚
僕のアンブレラのなかには君もゐる
この窓あの屋根を下ってもろもろの口笛も戻る
君はそんなに耐へかねてゐる
僕はそんなに剛情だ
小鳥たちが超え聲を落として羽搏くこともやる
夕暮が夜に呑まれた
僕のアンブレラのなかには僕はゐない
当時この本の装幀上の特色(用紙は山家紙、外装はカス入り楮紙)が、フランスのシュールレアリストに大きな反響を与えたそうです。
2013-02-21 Thu 21:25 | 古本
2013-02-21 Thu
編集兼発行者は北園克衛で、「VOU」を改題したものです。昭和23年に発行され、6号で終刊となったようです。写真のものは、そのうちの第1号と2号です。黒田三郎や、山中散生、田村隆一などが寄稿しています。
第2号で、山中は、「サッポロ通信」と題して、こんなエッセイを書いています。
「札幌に住むようになってから丁度一年半になる。文化的に索莫たるこの土地での生活の単調さは想像以上である。(略)すべての通行人の表情は固く、服装は汚い。」
山中は、NHKに勤務していて、昭和21年6月に札幌に来て、昭和23年5月に静岡に転勤しています。山中は昭和36年に退職し、昭和52年に亡くなっています。
2013-02-21 Thu 21:17 | 古本
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