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2012-08-16 Thu
東雅夫編「鏡花怪異小品集おばけずき」(平凡社ライブラリー)2012年6月8日刊
編者である東は、この本を編集した目的について、1970年前後に、鏡花文学に対する評価軸の一大転換がもたらされ、かつてのような揶揄のニュアンスが払拭されてすでに久しいが、いまだ十全には再評価の及んでない領域が残されており、その最たるものが「小品」の世界であるとしています。確かに、鏡花の小説は、すでに「古文」の域にあり、必ずしもとっつきやすいものではなくなっていますが、この本で採られている小品は、読みやすいものとなっています。
中で、特に印象に残ったものが、「夜釣」という作品で、これは、釣好きの大工が、家族に内緒で、夜中に鰻釣に行ったようなんですが(これも実ははっきりしません)、夜が明けても帰宅しません。それでばたばたしていたところ、いつの間にか、台所の手桶に大きな鰻がいて、子どもが鰻が逃げてはいけないと思って、ふたをして大きな石を載せます。妻の不安感と、鰻の出すぴちゃぴちゃという水音が、不穏な空気をかもしだし、怖さを感じさせてくれます。
2012-08-16 Thu 17:54 | 新刊本
2012-08-16 Thu
吉田精一 「随筆入門」 (新潮文庫) 昭和40年12月25日刊
最古の随筆文学である「枕草子」から始まって、昭和までの名随筆を紹介するとともに、古今東西の作品を引用しながら、随筆の書き方まで書かれている本ですが、紹介ないし引用されている随筆の量が膨大で、普通の人であれば、一生かかっても読みきれないのでは思われるほどです。
その中で、「日本人は、とくに随筆的な、或いは随筆を好む性向がある。日本人は直感的、芸術的な性格や嗜好をもって生まれ、一滴の水の中に宇宙を感じるというような具合に、過程をとびこして物の神髄を感得する性能にすぐれていた。」と書いています。
エッセイとの違いについて、随筆は、自然や人生の万般について語るものであり、何ものかを感得させる意味を持っているものであるのに対し、エッセイは、筆者が自分の個人的人格的の色彩を濃厚に出すこと、極端に作者の自我を拡大し誇張して書かれたものであるとしています。
2012-08-16 Thu 17:48 | 古本
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