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2011-07-29 Fri
司修 本の魔法 白水社
画家、作家そして装幀家である著者が、これまで手がけてきた本について、その作者の思い出とともに語ったものです。
彼は、「文学者の心配をひきうけてたくさんの装幀をやっているうちに、文学者からの『生き方』の影響を受け、造本力より、僕の人生の色彩を増やしたように思う。」とあとがきに書いています。
確かに彼は、装幀を頼まれると、テキストを読み込むことは当然として、作者と付き合い、時には作品の舞台となった土地にも出掛けたりしています。それを貧乏性から来ていると、自嘲気味に言っていますが、そのため生霊を見たり(埴谷雄高)、絡まれたり(中上健次)、編集者と午後4時から午前零時過ぎまで黙々と酒を飲み続けたり(月山の装幀)、故人を偲んで一升酒を飲んだり(三浦哲郎)、体が弱っているので作者の妻から2,30分にしてくださいと言われていたのに5時間も話し込んだり(真壁仁)、すごいことだなあと思うのでした。
2011-07-29 Fri 17:00 | 新刊本
2011-07-19 Tue
藤田三男編 浅見淵随筆集新編燈火頬杖
ぜひ新刊を出して欲しいウエッジ文庫の1冊です。徳田秋聲、瀧井孝作、井伏鱒二、梶井基次郎、尾崎一雄ら実際に親しく交わった小説家たちを回想する随筆で、どれもこれもとても面白く読めました。
中でも川崎長太郎会見記というのがあるのですが、川崎の話し言葉が、「〜たんだヨ」、「〜思ったヨ」、「〜それにしてもよオ」、「〜どうかと思うナ」となっていて、いかにもという感じで、川崎の朴訥そうで、したたかな感じが良く表れているような気がしました。
また谷崎の細雪について、この作品は「今まで筆を尽くして書いてきた如く擬古的生活への没入で、その没入振りを描くことが最大眼目になっている。」と分析しており、なるほどなと思いました。結局関西に移っても変わらなかったということですね。
ほかに取り上げられるべき作家として、園池公致、三宅幾三郎、松本泰、山崎俊夫、小島政二郎、蔵原伸二郎、白石実三、福永挽歌、藤澤清造、中島直人、佐々三雄らの名を上げています。気に留めておきましょう。
2011-07-19 Tue 18:00 | 新刊本
2011-07-05 Tue
久松健一 書物奇縁
大学の先生が書かれた、古書にまつわるエッセイです。中でもとりわけ印象深かったのが、次のようなエピソードです。あるとき、店の主人から「宝物を買ってくれないかい」と声をかけられ、「質問はたった1度しかできないよ」と言われ、「これでいい。5万円だ」と言われます。これは当時の1か月分の家賃とほぼ同額だったそうです。そして、「おたくに託したい。金は後でいい」と言って、紫色の風呂敷を恭しく机上に置いたそうです。風呂敷に包まれていたのは、寺山修司が学生時代に作っていた雑誌「風」だったそうです。その後1週間もたたないうちに、その店は閉店してしまったということです。5万円という価格は、当時としてもかなり安かったように思います。古本好きなら、一度は夢に見る話です。私の場合は、そんな激レアな本でなくてもいいんですけどね。例えば、朔太郎のアルス版「月に吠える」5万円で売ってくれないかなあ。
この本では、寺山修司にかなりのページを割いていますが、佐藤泰志についても「佐藤泰志の作品の中で、間違いなく文学は生きている。忘れてならない作家の静かな声が、たしかに聞こえてくる。」と紹介しています。
2011-07-05 Tue 19:02 | 新刊本
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